
「あきらめた」ことで対人恐怖が改善した体験
僕は軽く扱われたり、からかわれたりをずっと経験してきました
子どもの頃は、体が小さかったのでいじめられました
肺の病気で、1年の1/3は休んでいたので「不登校」と扱われました
そのためクラスには、あまりなじめませんでした
男性としては声が高かったので、からかわれました
声が小さかったので、イライラをぶつけられました
運動ができなかったので、馬鹿にされました
社会人初めの研修では、周りが怖くてうまく話せない僕を笑う人がいました
料理人をめざしてはじめに働いたホテルの厨房では、
不器用で仕事ができない上に空気が読めなかったので暴力を振るわれあざだらけになりました
さすがに会社から注意が入りましたが、今度はだれも僕と話してくれなくなりました
僕は誰とも目を合わせることができなくなりました
怖くて会社に行けなくなり、無断欠勤を繰り返してぼくは会社を辞めました
転職した会社では、無理に明るく振る舞いました
でもやっぱりうまくしゃべれなくて落ち込みました
この頃僕は人間関係がどうすれば良くなるのかさっぱりわからなかったので、
人づきあいの仕方について話しているCDを片っ端からレンタルして聞いていました
その中で聞いた一つの言葉が僕の対人恐怖症克服の転機となりました
それは、仕事で失敗するとパニックになってしまうという方へアドバイスしている音声でした
仕事中に一つでもミスが見つかると取り乱してしまう、でも全てのミスを防ぐというのは難しい。
想定外の出来事に対してパニックになってしまうのを、どう克服すれば良いですかという質問でした。
その方へのアドバイスが、
「失敗するのが分かってるならそれは想定内です。想定内のことなら慌てる必要はないんじゃないですか?」
というものでした
失敗した時に、
「あー、予想通り失敗した」
「想定した通り思ってもみないことが起きた。全部予想通りだわ」
「あー失敗ね、そろそろ来ると思ってたんだよね」
こんな感じで考えればいいというアドバイスでした。
屁理屈に聞こえる人もいると思いますが、僕はなぜかこの話がすごく頭にこびりついて離れませんでした。
そして無意識のうちに自分の対人恐怖に対してもこのアドバイスを当てはめるようになりました。
具体的に言うと、
僕はいつも、
からかわれないように・軽く見られないように・弱く見られないように・嫌われないように、
強く見られるように・大きく見られるように・男らしく思われるように・堂々としている人だねと言われるように・好かれるように・失敗しないように・ミスをしないように・迷惑をかけないように、、、
ずっとそんなことを考えていました。
ずっと考えているのに結局どこかでミスを犯してしまって、嫌われたりからかわれたり軽く扱われてしまう事実に落ち込んでいました。
でもある時から、どんなに強く大きく男らしく自分を見せようと思っても、
僕は強面ではないし背も低いし声はかぼそいし、仕事の能力も高くないし、軽く扱われるのはもう防げないなと思うようになりました
そして、対人場面があるとやっぱり馬鹿にされたり軽く見られたりしてしまうのですが、
その時傷つきながらも、「あー予想通りからかってきた、バカにしてきた、想定内だなあ。」
と思うようにしました。
これを数年続けました。
相変わらず雑に扱われたり、僕にだけ上司の態度が違ったり。今まで通りそんな日々が続きましたが、「予想通り傷つけられたつらいつらい」などと言っているあいだにふとあることに気付きました。
それは、相変わらずそんな態度を取られると傷ついてストレスフルの状態にはなりますが、恐怖の感情が消えていたのです。
そして、もっと不思議なことに周りの態度がだんだん変わってきて、全くとはいえませんが軽く扱われたりからかわれたりすることが激減しました。
なぜこんな不思議なことが起きたのか?
人は、分からないものに恐怖を抱きます。
人間関係の失敗というのはいつどのような形で起こるかわかりません。だから怖いです。
でもどうせ失敗するんだとある意味諦めることによって、怖さが消えていきます。
恐怖に支配されていた頃は、いつどのような形で起こるかわからない失敗を防ぐために目一杯警戒し続けるので体が緊張していました。
しかし怖さがなくなってくると体と心の力がいい意味で抜けてきて、自然に相手の目を見て話せるようになったり、絞り出すように出していた声が自然な発声になったりといわゆる堂々とした印象に変わっていきました。
また、どうせ軽く扱われるんだとあきらめたことで、自分を強く見せることに向いていた意識やエネルギーを、相手の話を落ち着いて聞くことに向けるようになりました。
このような変化から、周りの人が受ける印象が大きく変わったのだと思います。
そして、ここが難しい所なのですが、
相手の目を見て話そう
自然な発声を心がけよう
相手の話を落ち着いて聞こう
これを単に行動だけでやろうとしても症状が重い人ほどできません。
それは、自分の中の恐怖・不安の気持ちを放置しているから。
そのため行動にブレーキがかかってしまいます。
そのまま行動だけ変えようといくら頑張っても、アクセルとブレーキを同時に踏んでいるような状態にハマってしまいます。
ここを抜け出すには「自分を否定せず受け入れること」が必要で、
そのためには上記の例のように、「一度あきらめてみる」ことが有効だとぼくは考えています。
軽く扱われる、おどおどしている弱い人間に見られる…ぼくはそんな自分が嫌いでしたが、「どうせ軽く扱われる」「おどおどしている自分を隠そうとしてもどうせバレる」、そうあきらめた結果、まさかのまわりの変化につながりました。
もちろん、この過程ではふつうに傷つきますし、1カ月や2カ月で変わるようなものでもありません。
この短い記事内で読む限りでは急激に改善したような印象を受けるかもしれませんが、変化には数年かかっており、いつの間にか良くなっていたというのが実際のところです。
以上が、諦めることで対人恐怖が改善した自分の体験です。少しでも参考になれば幸いです
もし、この話を聞いて自分もやってみたい、と思った方は(ぜひやってみてほしいのですが)、長期的な気持ちで取り組むことをおすすめします。
注:最後になりますが、ぼくのはじめの会社のように暴力をふるわれるなど、極端にひどい扱いを受けるところでは「どうせひどい扱いを受けるんだ」とあきらめることは危険です。ものごとには限度があります。あまりにも悪い環境の場合はその場から離れてから上記の取り組みをしてください。